蝶と僕

うだりお 著

150円(税込)

うだりお

誰にだってあるでしょ? 言いたくても言えないこと。大切な人だからこそ、言えないこと。

6月のある日、静岡に住む叔母から段ボール箱が届いた。箱を開けると、中には丸々と太った沢山の夏みかんと小枝についたアゲハ蝶の蛹。その蛹を見て、麻央は幼少の頃に蛹で遊んでいたことを思い出す。用水路をすいすいと流れていく蛹、怖かった叔母、優しかった母――麻央は母の秘密を知ってしまって以来、今の母がどうしても好きになれないでいた。そんな折、叔母から従兄弟の恭正の大学見学に付き合ってほしいと頼まれる。静岡からやってきた恭正の東京見聞に付き合う麻央だったが、次第に彼が本当は大学を見に東京へ来たわけではないのではないかと疑い出す。恭正は何をしに東京へやってきたのか。短編四作目となる本作は、新古の考え方が混じり合う現代に生きる親子の話。