日本語学2026年夏号(特集:「イディオムとコロケーションと構文とその周辺」「造語の基盤」)vol.45-2

甲斐睦朗 監修, 荻野綱男 監修, 近藤泰弘 監修

3,410円(税込)

明治書院

◆「イディオムとコロケーションと構文とその周辺」
 「イディオムとコロケーションと構文とその周辺」と題する本特集をお届けする。言語表現の中でも、複数の語が結びついて固定的・半固定的なまとまりを形成する現象は、語彙論と文法論の境界に位置し、長らく言語研究の重要な課題であり続けてきた。イディオム、コロケーション、構文、複合辞、慣用句、ことわざといった言語表現の単位は、それぞれ独自の研究の伝統を持ちながらも、互いに連続的・重層的な関係を結んでおり、その全体像を捉えるには多角的
な視点が不可欠である。また、近年では、大規模コーパスの整備と計算言語学的手法の発展により、これらの単位の分布的特性や合成性の度合いを定量的に分析することも可能となり、研究は新たな段階を迎えている。また、構文文法をはじめとする理論的枠組みの深化、認知言語学的アプローチの展開、第二言語習得や辞書学への応用など、関連領域も急速に広がりつつある。本特集には、これらの主題に関わる最新の論文を収録した。古典語から現代語まで、また
理論研究から応用研究まで、多様な切り口からの寄稿が揃っており、本領域の現在地と今後の展望を示すものである。
◯連語の埋め込みベクトルによる分類(近藤泰弘)
◯認知言語学から見た慣用句の位置づけ
 ―存在しない語彙にも存在意義を与えられる存在― (尾谷昌則)
◯慣用表現とことわざの拡張用法
 ─拡張の実態、研究の動向、および示唆─(土屋智行)
◯イディオム・コロケーション・構文をどう捉えるか
 ―構文文法の展開と認知文法の再評価―(野中大輔)
◯構文文法と日本語教育(李在鎬)
◯〝頭を抱える〟をどう使うべきか
 ─あるX投稿をめぐる一件から―(新野直哉)
◯日本語教育とコロケーション習得研究
 ―多義語コロケーションの習得に焦点を当てて― (大神智春)
◯比喩とイディオム(大田垣仁)
◯日本語コーパスにおけるコロケーションから何が見えるか
 ―「Xの手」を例に―(加藤祥)
◯諺の形態変化に関する通時的分析
 ―構成要素間の概念的関係と意味構造―(玉村禎郎)
◯(コラム)「わけ(だ)」の文法化の特異性
 ―談話から論理的な文章へ―(多田知子)
◯(コラム)国語辞典はコロケーションなんか知らないよ(飯間浩明)

◆「造語の基盤」
 社会の変化の目まぐるしい現代、新語が求められる機会も増えている。造語の基盤には、日本語に歴史的に備わってきた、語種により異なる形態上・意味上の性質、語を安定させる音韻規則、表現にまとまりを持たせる文法性など、言語構造上の類型が存在していよう。専門分野の中で訳されたり命名されたりして造られたものが一般に広まる語もあれば、日常のコミュニケーションにおける表現の工夫の中で生まれる語もある。
 中川論文は、現代日本語の造語とその周辺を社会的な背景とともに鋭く観察し、豊富な事例を挙げながら、多面的に論評を加えている。泉論文は、語の内部に文相当の要素が取り込まれている「文包摂名詞」という逸脱的な造語が、日常会話で活発に行われている実態を、それが好まれる理由とともに洞察している。陳論文は、近代以降の日本語で最も重要な役割を果たしてきた、漢字・漢語による新造語について、蓄積の厚い先行研究を踏まえて注目点を整理した上で、今後の研究課題を明示している。

◯語種と造語と借用と(中川秀太)
◯逸脱的な造語法「文の包摂」
 ―「おうちにかえろう。病院」という名前から―(泉大輔)
◯近代新語の連鎖造語(陳力衛)

【投稿】
高校生期のキャリア発達をふまえた「現代の国語」「国語表現」の授業づくり
 ―「自己の過去・現在・未来を語る」ポスターセッションの活動をとおして― (栗原賢)