創薬天然物化学 ―資源と臨床を結ぶ科学―

小池 一男 監修, 古平 栄一 監修, 藤原 裕未 監修, 白畑 辰弥 編集, 藤井 幹雄 編集, 李 巍 編集

6,600円(税込)

共立出版

薬学・農学・理工学・医学等の学生を対象とした天然物化学の教科書。「成分の起源」を示す豊富な写真から「生命の物語」に触れる。

本書は、自然界に存在する多様な生物資源が、いかにして人の命を救う薬へと姿を変え、健康と福祉に寄与してきたのかを、科学的かつ情熱的に描いた一冊です。創薬における天然物は、単なる分子や化学構造にとどまりません。それは、ある植物が過酷な環境を生き抜くために生み出した代謝産物であり、ある微生物が生存競争の中で合成した化合物であり、また、ある海洋生物が種の存続をかけて紡ぎ出した、まさに生命の知恵の結晶です。本書では、こうした天然物がどのような生物から、いかなる環境下で生まれたのかを視覚的にも伝えるため、可能な限り「成分の起源」を示す写真を添えました。野に咲く花、熱帯の森に根を張る樹木、海を泳ぐ生物、高山に育まれる菌類――それぞれの姿を通して、読者は成分の背後にある「生命の物語」に触れることができます。この試みは、従来の教科書には見られなかった新たな挑戦です。物質の性質や機能を理解するだけでなく、その背景にある自然の叡智と進化の軌跡を知ること。それは、創薬を志す者にとって、科学の枠を超えて感性と倫理観を育む大切な契機になると、私たちは信じています。また本書では、現代医学に加え、日本の伝統医学である漢方に用いられる生薬や、西洋の植物療法におけるメディカルハーブ、植物精油などについても幅広く取り上げました。東西の伝統と現代科学を結ぶ一助となることを願っています。天然物化学の学びを通じて、自然と生命、そして人間をつなぐこの道の先に、希望の光を見出していただければ幸いです。
第1章から第7章では、天然物化学の基礎として、生合成、有機化学、立体化学、構造解析、糖質および脂質について平易に解説しています。続く第8章から第10章では、芳香族化合物、イソプレノイド、アルカロイドといった重要成分を扱い、豊富なカラー写真を配し、唯一無二の書として全体を構成しました。さらに、第11章では微生物由来天然物、第12章では海洋生物由来天然物、そして第13章では植物精油に関する最新の知見を紹介し、天然物化学の広がりと深さを伝える構成としました。

関連書籍