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主権的利益の調整から私権の実現過程へ
外国判決の承認執行制度は「外国裁判所が介在した私権の実現過程」であると捉え直し、比較法的手法も用いながら、繊細かつ明確に解き明かす。外国判決承認制度の歴史的概観からその承認要件・効果、2つのハーグ条約と日本法の対比、時効の完成猶予の問題、国際民事執行に関する総論的問題まで扱う。好評を博した前著『外国判決の承認』に執行の側面を追加して改版した無二の研究書。
本書は、前著『外国判決の承認』(2018年)における問題意識を引き継ぎつつ、判決の「承認」に加えて「執行」の側面を新たに検討対象に加え刊行されたものである。外国判決の承認を定める民事訴訟法118条について、従来の「主権的利益の調整」という国家中心的な視点からではなく、「私人間の民事紛争解決」、すなわち「外国裁判所が介在した私権の実現過程」であると捉え直す基本的視座は前著から変わりはない。
近年、国際化の進展により、消費者取引、環境問題、契約紛争など、私たちの市民生活も渉外的要素を不可避に含むようになっている。このような社会状況のもとで、外国で下された判決を日本でいかに承認し、さらには執行するかは、当事者の権利確保と法的安定に直結する極めて重要な課題である。
外国判決の承認制度がもつ法的機能を、「司法共助」の延長としてではなく、私法上の紛争解決制度として再定義する必要があるとの問題意識のもとに本書は執筆されているが、その背景には、制度の母法としてのドイツ法の影響、そして明治期にさかのぼる制度が大きな法改正を経ることなく現行法に至っている一方で、理念的には大きな転換が生じているという事実がある。
外国裁判所の国際裁判管轄、適正な送達、公序に関する判断、相互保証などの承認要件について、日本法とドイツ法の比較を通じた詳細な分析がなされているのみならず、コモンロー諸国に見られる懲罰的損害賠償、国際的な判決の抵触といった内容面の問題、さらには近年のハーグ条約をはじめとする国際立法動向との関係も視野に入れ、制度調和の課題を幅広く扱っている。
執行に関する論点、すなわち外国判決の効力、執行判決訴訟の性質や訴訟物、執行行為の承認可能性といった実務的にも重要なテーマにも踏み込み、外国判決の承認制度に対する理論的再検討を通じて、渉外民事紛争における権利実現の実効性をいかに確保すべきかを問い直す。
民事訴訟法、国際民事手続法、国際私法、渉外法務に関心をもつ研究者・実務家にとって、理論と実務の双方に資する一冊。