転移焦点化精神療法による病的自己愛の治療

ダイアナ・ダイアモンド 著, フランク・E・ヨーマンズ 著, バリー・L・スターン 著, オットー・F・カンバーグ 著, 鳥越淳一 訳

6,732円(税込)

株式会社金剛出版

近年,自己愛の問題はかつてないほど臨床的,および社会的な議論に登場しており,あらゆる理論的背景の臨床家たちが,自己愛の病理を有する患者が広く存在しており,治療が難しいことに同意している。

本書は,現実から逃避して自己愛的な誇大妄想に陥り,生活や人間関係を危うくする自己愛的特徴や自己愛性パーソナリティ障害(NPD)まで,さまざまな水準におよぶ自己愛の病理を有する患者に特化したクリニカル・ガイドであり,オットー・カンバーグの研究グループが開発した境界性パーソナリティ障害(BPD)への治療法である転移焦点化精神療法を応用している。

第Ⅰ部では,現代対象関係論に基づいて自己愛の病理を概念化しつつ,社会的認知,アタッチメント,神経生物学からの研究知見と臨床例を加えている。第Ⅱ部では具体的な治療アプローチが提示され,さまざまな水準の自己愛の事例素材によって理解を手助けしている。第Ⅲ部では,自己愛の問題が表面化しやすい恋愛関係や,社会的・政治的領域に拡大する悪性自己愛の問題にも取り組んでいる。

自己愛患者との作業に行き詰まりを感じている臨床家にとって,理論的基盤と現場の実践の両面で指針となる必見の書である。