赤富士と応為、そしてボストンの男たち

キャサリン・ゴヴィエ 著, モーゲンスタン陽子 訳

3,900円(税込)

株式会社彩流社

「不思議に魅力的な本である」と故・立花隆氏に絶賛された前作『北斎と応為 上・下』(2014年、彩流社刊)に続く第2作!幕末から明治初期、日本の混乱期に多くの文化財が流出している。世界に名を馳せた葛飾北斎の作品も高値で取引されていた。北斎の娘・応為は、父に劣らず健筆を振るっていたわけだが、女性絵師は、女性であるだけで存在を消されることとなり、決して正当には認められることの無い時代であった。当時、来日したアーネスト・フェノロサやエドワード・モース、ウィリアム・ビゲローの3人が買い集めた作品群の中にも応為の作品は含まれていたのだが………。本書は、亡霊となることで明治の時代を死後に眺め続ける応為と三人のボストン人との関わりを描き、忍びながら華やいだ絵筆の後の浮世絵流出の姿と女性絵師の密やかでありながら光を燈し続けた復活を描く物語である。

目次
第一部
1  一八八一年 神奈川の無縁仏
2  波止場での出来事
3  横浜グランドホテル
4  一八八二年 蛮人たちの家
5  一八八三年 美術品を追い求めて
6  狂ったように
7  リジーの役割
8  僧の拒絶
9  高野山
10 火事の後
11 幽霊の末路
12 そして、四人
13 暗い出来事
14 任務終了
第二部
15 一八三一年 江戸
16 数十日後
17 一八三五年 四年後の江戸
18 一八六八年 北曜
19 最期
20 一八五三年 浦賀湾、黒船
第三部
21 一八九二年 ボストン
22 失墜
23 さらなる失墜
24 闘鶏
25 本間耕曹
26 一八六七年 東京 応為
27 蛮人戻る
28 目録
29 一八九九年 東京 ダンス
30 一九〇〇年 パリ
31 一九〇〇年 東京 能
32 戸崎の菓子
第四部
33 一九〇四年 ボストン
34 一九〇四年 デトロイト
35 ウィノナ湖、インディアナ
36 デトロイト
37 一九〇八年 ロンドン 最初の旅立ち
38 ニューヨーク あの本
39 一九一三年 コベント・ガーデン ロンドン
40 出版人ハイネマンとのディナー
41 ロスト・ボーイズ
42 臨終の訪問
43 モビールのメアリー
44 東京――小布施
45 小布施――東京 菓子
46 再び東京で
47 東京 能楽
48 東京郊外、応為一人

ある小説家の応為研究
   ――あとがきにかえて

謝辞
訳者あとがき