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デモラリゼーション(意気消沈)とは、差し迫った問題に対処できず、失敗体験が続くことで無力感や絶望感が深まった心理状態である。自殺との関連が実証され、緩和ケアやリエゾン精神医学の領域で注目されている。 DSMに当てはめれば、適応障害(適応反応症)やうつ病と診断されることが多いが、うつ病とは異なるとされており、抗うつ薬は無効である。援助するためには、自己統御感の回復や人生の意味に焦点を当てた心理学的アプローチが必要である。
本書では、デモラリゼーション概念とその理論的背景を解説し、うつ病中核群との鑑別方法、さまざまな臨床場面におけるデモラリゼーションの特徴と援助の具体策を示す。また国際的に普及している評価尺度(デモラリゼーション尺度II)の日本語版も掲載している。
デモラリゼーションを理解することは、意気消沈している人びとの援助に役立つだけでなく、支援者自身の無力感を軽くする一助となるだろう。