脱中心の詩学

森本光 著

2,600円(税込)

株式会社彩流社

本書はポーの作品をめぐる批評集である。三部立て構成となっており、1つの章で1つの作品をとりあげ、厳密に読み解いてゆく。それぞれの章では異なった作品を扱うが、各部ごとに連関したテーマを含む。第1部は「ゴシック・ホラーの喪とメランコリー」。ポーのゴシック的な詩や小説における「横たわる」ことのモチーフに焦点を絞り、それが有する現世主義に対する「脱中心性」を読み解く。第2部は「SFの時空間」。ポーのSF的な冒険小説を取り上げ、そこにおける時空間や身体の超越の問題について批評し、「いま・ここ・わたし」を起点とする人間中心主義的思考を「脱中心化する想像力」を抽出することを試みた。第3部は「起源のミステリーとミステリーの起源」。一見すれば推理仕立ての小説にみえるポーの作品が、本当に謎解きを本質としたものなのか?その疑問から仮面の下にひそむモチーフに注目し、「脱中心性」をあきらかにする。そして補足補完すべく3つのエセーを付し、ポーの短篇小説を翻訳する。それは、ポー文学の脱中心性を知る上で、格好のものとなるのが小説だからである。

目次
序章  なぜ「脱中心」なのか
第1部 ゴシック・ホラーの喪とメランコリー
第1章 死者と横たわること――「大鴉」をめぐって
第2章 横たわることの詩学――「アッシャー家の崩壊」の謎をとく
エセー(1)「夜の訪問者」
第2部 サイエンス・フィクションの時空間
第3章 空気の隠喩――「ハンス・プファールの比類なき冒険」探索
第4章 自我なき海への郷愁
    ――「アーサー・ゴードン・ピムの冒険」SF・脱中心
エセー(2)萩尾望マンガの脱中心性
第3部 起源のミステリーとミステリーの起源
第5章 太陽の指針――「黄金虫」と「スタイラス」の図像学
第6章 脱中心の詩学――「モルグ街の殺人」における遊戯の規則
エセー(3)動物好きに捧ぐ
付録  翻訳「楕円形の肖像」「週に三度の日曜日」
      「ウイサヒコンの朝」「本能と理性」