日本語学2024年春号(特集:「ジェンダー意識と日本語」「生成型AIと教育」)vol.43-1

甲斐睦朗 監修, 荻野綱男 監修, 近藤泰弘 監修

3,410円(税込)

明治書院

◆ジェンダー意識と日本語

 ジェンダーについての議論が、日本社会の諸分野で盛んである。例えば、ジェンダーギャップ指数の国際比較で女性の地位が低いことが問題視されたり、理系は男性に向いているとか、育児は女性がするものだなどというジェンダーバイアスに異議が申し立てられたりしている。性的少数者への差別を禁じる法律を制定したり、見過ごされがちだった性加害を告発したりする動きも、人々のジェンダー意識の変化に伴って強く支持されるようになってきた。
 ジェンダー差別の解消に向け、日本社会は確かに変わりつつあるが、長い歴史の中で形成されてきた価値観や、意識化されていない偏見などが、それを阻んでいるところもある。こうした問題は、ことばによってつくられたり規定されたりしているところがある。本特集では、日本におけるジェンダー問題の背後にある、ジェンダー意識と日本語とのかかわりについて、長年この問題について研究してきた論者に、最新の論考を寄稿してもらった。

〇「日本語のジェンダー」研究小史 遠藤織枝
〇報道とジェンダー 加藤恵梨
 ――新聞にみる人々の「性別による無意識の思い込み」の変化――
〇国語辞書のジェンダー意識 佐竹久仁子
〇文体とジェンダー意識 高崎みどり
〇キャラクター言語に見るジェンダー意識 安井寿枝
 ――宮﨑駿作品の特徴とは――
〇談話がつくるジェンダー意識を探る 笹川洋子
〇中国の性的少数者をめぐる動きとことば 河崎みゆき
〇「男ことば」とジェンダー意識 小林美恵子
 ――その歴史と変容――
〇性自認・性的指向と言語実践 阿部ひで子
 ――トランス女性の場合――
〇無意識の固定観念が生み出すひずみを見極める 前田安正
 ――枠を外してことばと向き合うために――

◆生成型AIと教育

 AIと教育の未来には多くの人が関心をいだいているのではないだろうか? 今回の特集号では、「生成型AIと教育」というテーマのもと、生成AIについてのわかりやすい説明に加え、今後想定される授業風景や言語学習の新しい形を集めてみた。AIが教師の助手として活躍する時代、それは一体どのようなものだろうか。ロボットのようなアシスタントが、各教室で教えてくれるようなことになるのだろうか。
 この号では、そうした「未来すぎる」話題に及ぶ前提として、まず、現在教育現場で利用されているAIツールの実際など、教育現場の最前線をわかりやすく、お伝えする。AIと共に学ぶことは、思いのほか楽しいかもしれない。そんな新たな発見が詰まった本特集で、AIの進化が教師と学生の関係性にどのような新たな形をもたらすのか、また、言語学習における個別化された指導とその効果について、最新の研究成果や実践例を見ながら、考えていただきたい。

〇ICT・GIGA・生成AIが教育に与えたインパクト 堀田龍也
 ――私たちが当たり前だと思っていた教育を再検討すべきタイミングにいる――
〇生成型AIと語学教育 水本篤
 ――英語教育の立場から――
〇対話型生成AIが拓く言語教育のフロンティア 野中潤
 ――国語科教育における「書く力」の行方――
〇異様に物知りだけど、ピントのズレた友人とともに学ぶ 渡邉光輝
 ――中学校国語科における生成AIを活用した授業開発の現場から――

【連載】
[新刊クローズアップ]滝浦真人・島津暢之
[ことばのことばかり]はんざわかんいち
[二次元世界のはなしかた]金水敏
[にほんごの航海灯]加順咲帆
[国語の授業づくり]内田浩文

[虎の門通信]大滝一登
[新刊・寸感]相澤正夫

【付録】
日本語学総目録2023年(Vol.42)