日本語学2023年冬号(特集:「文章を書く教育」「日本語と試験」)vol.42-4

甲斐睦朗 監修, 荻野綱男  監修, 近藤泰弘 監修

3,410円(税込)

明治書院

◆文章を書く教育

 日本語の文章作成とその教育においては、ジャンル、目的、校種、学習者の属性などによって様々な文章像が掲げられ、それを目指して指導が重ねられている。指導者の努力によって、学習者は書く力を養い書き手となって多くの文章を産出するようになり、社会の活力の増進につながっている。
 ところが、学習者は、校種が上がったり、目的の異なる文章を学んだりすると、新たな文章指導を受けることになり、既に学んだ文章表現法が応用できるのか、学び直しが必要なのか戸惑うこともある。指導者は、自身の領域とは別のところで、どのような文章指導が行われているのかをよく知らず、学習者の戸惑いに気付かなかったり、気付いてもどう対処してよいか困惑したりする場合もある。
 近年は、学習指導要領の改訂、ICTの普及、日本語を使う層の拡大、公共コミュニケーションにおけるわかりやすさの追求など、日本語の文章を取り巻く社会状況の変容に応じて、文章や文章教育の研究もいっそう多様化し活発化している。本特集で、日本語の文章の研究や教育をめぐる諸活動を広く取り上げ、海外の文章教育も紹介することが、文章教育の連帯につながればと思う。

◯日本語の文章研究と文章指導 石黒圭
◯国語科教育における「書くこと」の学習指導 田中宏幸
 ――中学校国語教科書における「書くこと」教材の特徴と実践上の課題――
◯創造的なアウトプットを求める学び 品田健
◯大学生の学術活動と文章作成指導 佐渡島紗織
 ――豊かな発想力をもち、分かりやすく伝え、社会で応用する――
◯留学生に対する日本語のライティング指導 大島弥生
 ――これまでの潮流とこれからの展望――
◯作文教育の国際比較 渡邉雅子
 ――社会が求める思考法と人物像――
◯児童・生徒作文の分析と文法指導 松崎史周
◯わかりやすく書くためには 岩田一成
◯文末詞について思うこと 安藤宏
◯小学校国語教科書の文体の変遷  田中牧郎
 ――日本語の歴史から見る――

◆日本語と試験

 日本語に関する各種の力を測るために、さまざまな試験や検定が実施されている。どのような内容で、どのように測定しているのだろうか。またその結果からはどのような現状が現れてくるのだろうか。
 ここではその中から主なものとして国際交流基金・日本国際教育支援協会による日本語能力試験、特定非営利活動法人日本語検定委員会による日本語検定、公益財団法人日本漢字能力検定協会による日本漢字能力検定について、それぞれを主催されている側の方々に、企画・出題している立場からその目的や内容、特色などを紹介、解説していただく。さらにそれに関わりのあるものとして、三条市諸橋轍次記念館による諸橋轍次記念漢字文化理解力検定についてコラムを寄せていただく。また参考となるように、中国などで古代から続いた官吏登用試験である、科挙における漢字に関する出題と採点について併せてコラムを設けて、関連する試験の実情を紹介する。

◯日本語能力試験(JLPT)の方法と現状 高野知子・市岡香代
◯日本語検定の方法と現状 中川秀太
◯【コラム】諸橋轍次記念 漢字文化理解力検定 嘉代隆一
 ――漢字文化を次代へ――
◯日本漢字能力検定(漢検)の方法と現状 山崎信夫
 ――手書きにこだわり、様々な言葉に出会える試験――
◯【コラム】科挙の漢字 笹原宏之

【連載】
[ことばのことばかり]はんざわかんいち
[二次元世界のはなしかた]金水敏
[新刊クローズアップ]泉子・K・メイナード、笹原宏之
・『ミステリードラマの日本語 発話と記号の演出を探る』
・『方言漢字事典』
[にほんごの航海灯]占部由子・大江元貴
[国語の授業づくり]沖奈保子