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◆日本語習得を促すもの
現在、外国語教育や日本語教育の中で行われる活動は非常に多様である。第二言語習得研究によって得られた知見や仮説に基づき、様々な活動・手法が取り入れられ、教材開発も進んでいる。そして、新たな考え方に基づく実践研究は今も盛んに積み重ねられており、日本語教育の方法に関する理論は更新し続けられている。
しかし、言語教育の専門家でない人が、それらの活動・手法の意義について詳しく知ることはあまりない。たとえば、「シャドーイング」はNHKラジオの英語講座でも取り入れられるほど一般的な練習方法となっているが、なぜシャドーイングが有効なのか、どう行うのがよいのか、などをリスナーが知る機会はあまりないだろう。それぞれの活動にどんな意味があるのかを知ることは、学習をより一層効果的にすると考え、今回の特集では、現在の日本語教育の世界で取り入れられるようになった、あるいは今後、普及が期待される活動・技法・手法について取り上げる。
◯シャドーイングで伸びる力とそのメカニズム 古本裕美
――第二言語習得と心理学の観点から――
◯第二言語習得におけるインプットの役割 中上亜樹
――肯定証拠と否定証拠という観点から――
◯日本語教育における多読 吉川達
――読むことによって読む力を育てる――
◯読解における「ペアによる再話活動」の可能性 小河原義朗・木谷直之
◯伝える発音を身に付けるには 中川千惠子
――日本語教育における発音教育の現状――
◯教室における日本語学習者のプライベートスピーチ 御舘久里恵
――社会的空間において創造される個人的学習空間――
◯日本語教育の協働学習(ピア・ラーニング) 池田玲子
――教室という社会での学び合い――
◯自律学習を促す学習環境デザイン 衣川隆生
◆人を指すことば
日本語は、自称・対称の人称代名詞が豊富で、親族名・役職名・職業名などが自称や対称になる場合に規則性が見られ、そこで使われる語彙の種類や運用は時代や地域によって様々である。また、第三者を指すことばの種類や運用にも、社会や文化の特徴を反映した興味深い現象が見られる。そして、近年急速に進んでいる、ジェンダー平等や人権尊重の実現をはじめとした、社会における人への意識の変化が、人を指すことばの運用や体系に、変化をもたらしつつあるようにも見受けられる。
本小特集では、日本の社会や文化と深く関わっていると考えられる、人を指すことばの多様性とその変化について、(1)体系と運用、(2)ジェンダー、(3)用語意識の観点から三つの論考で照らし出す。
◯日本語の人称詞の問題点 金水敏
――人称詞と「品」「格」「性」「年」の観点から――
◯「女夫茶碗」か「夫婦茶碗」か 遠藤織枝
◯人権尊重と用語意識 関根健一
――言い換えの意義とその限界――
【連載】
[にほんごの航海灯]「日本語学会賞」受賞者一覧
[ことばのことばかり]はんざわかんいち
[国語の授業づくり]「現代の国語」と「論理国語」の学びをつなげる実践 佐藤治郎
――「情報の扱い方」を軸に科目間を関連させ、思考過程を「見える化」する――