理論生物学概論

望月 敦史 著

5,170円(税込)

共立出版

数学や計算機シミュレーションなどの理論的方法を用いて、生命現象の解明に迫る理論生物学は、近年急速に台頭し、注目を集めている。本書は、分子生物学、細胞生物学、発生生物学にまたがる様々な理論研究を紹介し、同時に主要な数理的方法を解説した教科書である。各章では生命科学の重要なトピックを取り上げ、生命現象が理論的に解明される面白さと、数理的手法の重要性を、読みやすいストーリーで学べる形となっている。各章の末尾には「数理的手法」の項目を設け、各章で用いられた手法について、個人で学習できるレベルでまとめている。演習問題も多数掲載されている。

本書のもう一つの大きな特徴として、理論生物学における新しい方法である「構造理論」を学べる初めての教科書であることが挙げられる。構造理論は、力学システムの動的性質の重要な側面を、ネットワーク情報だけから決定する数学理論である。これは近年著者らが開発し、細胞分化の遺伝子ネットワークや、植物代謝ネットワークなどの実際の生命システムの解明に用いられ、かつてない成果を挙げている。また、生命システムを超えて様々な複雑システムに適用できる可能性があることから、広く理論科学分野で注目されている。

理論生物学の教科書であると同時に、数理的手法の学習書でもあり、新しい数理理論を学べる専門書としての側面を持つなど、本書は様々な特徴を備えている。