量子論のための表現論

林 正人 著

4,180円(税込)

共立出版

 量子力学において、表現論的構造を意識することで、より深くその問題が理解できるだけでなく、一般化が容易に可能となることは多い。そこで本書では、基本的に数学としてはよく知られている表現論の知識を、表現論的考え方が量子論の理解のための基本的なインフラとして機能するように、量子論の立場から、量子論のテーマに応用しやすいよう再構成して提供する。線形代数や微積分、確率統計の一定の知識はあるものの群論の知識を一切有しない読者を対象とし、記号も量子論のものを用いている。
 また、量子論への応用のために必要となる表現論の複数のテーマを扱うことで、量子論における表現論の全体像が見えやすくなっている。同時に、これらの複数のテーマの間の類似性を強調しているので、テーマ間のアナロジーが効きやすいように構成されている。これにより、やや進んだ表現論のテーマも比較的容易にそのポイントを掴むことができるだろう。
 本書は、初めに、量子論の基礎概念を説明する。次に、一般の群についての表現論を扱う。その後、量子論で重要となるLie群およびLie環の表現論を解説する。最後に、Bose量子系を与えるHeisenberg表現について扱う。