単一光子と量子もつれ光子 ―量子光学と量子光技術の基礎―(基本法則から読み解く物理学最前線 19)

須藤 彰三 監修, 岡 真 監修, 枝松 圭一 著

2,200円(税込)

共立出版

 光は、粒子性と波動性の両面をもった存在、すなわち量子性をもつ存在であると認識されている。
 近年、古典的な波動の概念では捉えることのできない、さまざまな種類の光(非古典光)を作り出すことが可能となっている。その例のひとつが、光子が1個ずつ放出される「単一光子状態」や、光子が対となって放出される「光子対状態」、複数の光子が量子的相関をもつ「量子もつれ」などである。これらの非古典的な光の状態を用いると、古典的には理解することのできない回折、干渉効果を引き起こすことができ、量子力学の基本的原理に関する恰好の研究舞台となっている。
 さらに、光子の偏光は量子力学における2準位系として振る舞い、量子情報通信における情報の単位である「量子ビット」として頻繁に用いられている。
 本書で主に取り扱うのは、光が示すこのような物理状態である。
 本書では、光の量子的性質を利用した新しい科学技術を志す際の礎となることを目指し、光の量子状態や光子が示す性質とその最新の応用技術について自然に学べるよう配慮している。そのために、類書にはないであろう特徴として、初等量子力学で必ず学ぶ、調和振動子の量子状態について少々深い理解まで到達したうえで、光を量子的に扱う「量子光学」への橋渡しとすることを試みている。
 また、量子情報の最小単位(量子ビット)としてよく用いられる光子の偏光状態については、古典的な光の偏光状態と関連づけて理解できるよう詳しい説明を加えている。
 本書を読み進むうちに、量子光技術において重要な「単一光子」および「量子もつれ光子」の物理と、それらの応用技術までを自然に理解できるような構成になっている。