木本植物の生理生態

小池 孝良 編, 北尾 光俊 編, 市栄 智明 編, 渡辺 誠 編

3,960円(税込)

共立出版

 多年生植物である樹木は芽生えた場所で長期間にわたって環境を利用しながら成長し、そのうち周辺環境をも変える巨大な構造物になる。これらの特徴を草本植物と対比するため、本書では木本植物と呼ぶ。木本植物は植物の環境適応を考えるうえで、興味深い材料でもある。本書では都市緑化や木質資源再生などの応用に役立つ基礎を学ぶために、ツル性木本植物を含んだ木本植物の生き方の一端を紹介したい。
 植物の光合成のもとになる二酸化炭素(CO2) 増加に伴う温暖化によって、温度、降水の地球規模での急激な変化がもたらされている。住環境として期待の大きい樹林地や都市近郊林は、地域からもたらされる自動車からの排ガスに関連した大気汚染(主に光化学スモッグ)、過剰施用している窒素肥料に起因する窒素過剰、越境大気汚染によっても健全性が損なわれる。景観をそこなう虫害の発生など、身近な緑が悪影響を受けている。これらの影響を受けにくい緑地や森林造成が必須である。国家としてのグリーン・インフラの整備の基礎を、この著書から捉えていただきたい。
 本書は、最終目的である森林を基礎とする生態系サービスの高度化のために、保全生態学の基礎、植生分布に起因する種内変異、生産の基礎を担う光合成とその産物の分配、植物生態学の基本原理、環境資源としての窒素動態、安定同位体利用による樹林地の健康診断、そして地球環境変化による影響評価をコンパクトにまとめた。樹林地など緑資源の保全管理のために、木本植物の環境応答の最前線情報を手早く得られることを本書の特徴とする。重点トピックはコラムとして、新進気鋭の研究者からの情報を掲載している。

【読者対象】
植物学・生態学・森林学を学ぶ大学学部生から大学院生、各地の林業大学校、各地の農業高校森林科の学生および教員