日本語学2020年冬号(特集:年号を考える 他)vol.39-4

宮地裕 監修, 甲斐睦朗 監修

3,410円(税込)

明治書院

◆年号を考える
 昨年公布された新たな年号(元号)の「令和」は、その字体、発音、意味、出典など、ことばや文字に関わることについても種々の面で大きな関心を呼び、様々な話題を生むとともにいくつもの課題のあることを明らかにした。
 年号とはそもそもどのようなものであり、年号を日本語などのことばや文字として見たときに、どのようなことが言えるのか。それぞれの観点から明らかにしていきたい。

◯年号と漢字 笹原宏之
――歴代諸国の祈念と意図――

◯前近代の年号 小倉慈司
――決定方法とその出典、意味――

◯令和と蘭亭序 財前謙

◯年号の音韻構造 窪薗晴夫

◯琉球の元号 上里隆史

◯中国の年号 水上雅晴
――その発生と展開――

◯西夏の年号 荒川慎太郎
――西夏文字と西夏語の表現を中心に――

◯韓国の年号 吉本一

◯ベトナムの漢字年号について グエン・ティ・オワイン
――李王朝を中心に――

◆日本語能力の一般的意識
 2019年4月に新たな在留資格「特定技能」が設けられた。14の特定産業分野において外国人の受け入れが始まっているが、すでにコンビニエンスストア等、分野の拡大についての検討が始まろうとしている。今後、一層、身近な場面で日本語を母語としない人と母語とする人が接し、交流する機会が日常化することが予想される。
 日本語能力についてどう捉えるか、いかに評価するかについては、これまでテスト開発者等を中心とした専門家によって研究が行われてきた。そして現在は、文化審議会国語分科会日本語教育小委員会において「日本語教育の参照枠」に関する審議が続けられており、2020年度末には、日本語能力の判定基準に関する審議結果が公表される計画である。日本語教育の関係者が広く共有できるような基準が設けられることになるのだ。
 その一方で、多様な日本語使用者による日常的な交流がますます盛んになることを考えると、日本語教育の専門家とは異なる、一般の日本人が、「外国人」の用いる日本語をどう捉えるのか、そして、日本に生活する一般的な「外国人」が、自らの日本語使用をどう捉えるのかを知り、社会全体が取り組むべき課題を明らかにすることは、これからの社会を作っていく上で非常に重要である。3種の論考により、日本語能力や「外国人」の日本語は一般にどう捉えられるのか、また評価されるのか、そこに問題はないかを示し、日本語能力や日本語使用に対する意識を再考する。

◯日本社会における外国人の日本語の評価 野原ゆかり
――「一般的な日本人」との関わりのなかで――

◯「外国人に対するわかりやすい話し方」に対する日本語母語話者の意識 栁田直美

◯外国人居住者の日本語使用と自己評価 高民定
――ホスト社会との接触の新たな可能性を探って――

【連載】

[甲斐睦朗エッセイ]………甲斐睦朗
[ことばのことばかり]………はんざわかんいち
[校閲記者のこの一語]………髙松美聖
[国語の授業づくり]………田中洋美