【電子版】すべては森から

落合俊也 著

2,800円(税込)

建築資料研究社

シリーズ人気企画5年間の集大成がついに書籍化

建築、健康ウェルビーイング、林業、エコツーリズムにその他、森林や木材に興味のある幅広い読者におすすめのドキュメンタリータッチのインスピレーションアップ啓発書です。

森林はヒトにとって特別な環境である。そこは人類の発祥の地であり、我々の遺伝子の進化が森林環境に大きな影響を受けているからだ。700万年もの時間をかけて進化してきた人類は、たまたま石油や石炭という化石燃料を発見したことで、太陽リズムに寄り添う光合成のリズム(森のリズム)から逸脱した生活を送るようになった。太陽エネルギーがなくても石油の力で活動できるようになれば、もはや昼も夜もない。だから、森のリズムに従う必要もなくなってしまった。森のリズムに即した活動から離れた途端、経済は無秩序に拡大し、人口の爆発的増加が起こり、地球環境はその破壊のスピードを早める。自然から逸脱した環境は、私たちの体や精神に不安定な状態を強いている。

今ここで、私たちは遺伝子に組み込まれた意識下の本能を再起動させなければ、同一地球生命体の仲間と今後共存するどころか攻撃される存在となってしまうだろう。多くの犠牲者を生み出している新型ウィルスも、本来は私たちを脅かす存在ではなかったはずなのだ。

この本は、そのゴール(SDGS:持続可能な開発のための2030国連アジェンダ)に至る指針を脇目に見ながらも、現行の試みの中に新しいウェルビーイングへの道筋を見つけるためのドキュメント旅行記のようなものである。国内のみならず国外の事例として、森と独自の深い関係を築いた活動や人物を紹介することで、読者の皆さんには森と健康と建築をつなげる発想を自由にふくらませていただくことを意図している。

各々のテーマは医学、芸術、建築、林業など多岐にわたっていて、一見互いに無関係に見える。しかし、その全てのテーマの中心には森がある。したがって一見脈絡のないように見える各々のテーマは、森を連結点としてお互いに繋がっている。そのことでより統合的な視野が育ち、新しいインスピレーションが生まれ、それが次世代の価値の創造につながるのではないかと期待する。