日本語学2019年12月号(特集:裏側の日本語学)vol.38-12

宮地裕 監修, 甲斐睦朗 監修

1,430円(税込)

明治書院

◆「裏側の日本語学」

 日本語学がこれまで取り組んできた領域やテーマには、実は偏りが見られるようです。たとえば日本語史の研究では、変化した部分には注意が向けられますが、変化しなかった部分はあまり興味が持たれません。同様に、方言の研究では、地域差が観察される事象は取り上げられますが、地域差がないところはあまり注意されないようです。
 一方で、日本語学を含めて言語研究の歴史は、それまで日が当たらなかった言語(ピジン・クレオール、中間言語など)や言語事象(バリエーションなど)を取り上げることによって新たな分野を開拓し、成果を積み上げるという歴史でもありました。したがって、いまは顧みられることがあまりない言語事象でも、理論的なあるいは社会的な理由によって今後脚光を浴びるようになる可能性をもっているものがあるかと思います。
 本特集は、現時点ではあまり取り上げられていない言語事象やテーマに意図的にスポットライトを当ててその取り上げられていない理由を検討するとともに、今後、十全な研究対象として認識し、将来の研究へと展開させていく可能性を考えてみる企画としました。

〇「裏側」のことば 渋谷勝己

〇語彙調査の裏側 石井正彦
 ――基本語彙から周辺語彙へ――

〇卑語は敬語の反対・裏側か? 西尾純二

〇発話媒介行為の宿命 加藤重広

〇言語変化・方言分化が起こりにくいところ 大西拓一郎
 ――方言地図からさぐる――

〇借用されないことば 簡月真
 ――日本語とアミ語との接触を軸に考える――

【連載】

[ことばのことばかり] はんざわかんいち
[校閲記者のこの一語] 大熊萌香
[漢字を追いかける] 笹原宏之