放射線治療システム『Versa HD』の使用経験について/横田典和(高知県・高知市病院企業団立 高知医療センター 医療技術局 放射線治療技術科)[全8頁]

映像情報メディカル 編

500円(税込)

産業開発機構株式会社

エレクタリニアックの最上位機種である『Versa HD』による臨床使用を始めて2年が経過した。Versa
HDはコンベンショナルな治療から強度変調放射線治療(Intensity Modulated Radiation Therapy:
IMRT)・強度変調回転放射線治療(Volumetric Modulated Arc Therapy:VMAT)、定位治療に対応し、モンテカルロアルゴリズムによる線量計算を行う治療計画装置『Monaco 5』と放射線治療デー
タマネジメントシステム『MOSAIQ』の統合されたソフトウェアで構成される放射線治療システムである。同時に導入したリニアック『Synergy CT on Rails』とはマルチリーフコリメータ(MLC)
Agility・線種・6軸補正治療寝台『HexaPOD evo』等共通の基本性能を有し、2台の装置間でX線のビームマッチングを実施していることにより、MOSAIQ上で治療装置名を選択するだけでどちらの装置でも治療が可能なシステムとなっている。実際の運用は装置のトラブル時のみに代替照射を行い「治療装置トラブル時でも放射線治療をお休みしない」という方針で運用を行っている。
Versa HDの特長のひとつは、6 MV・10 MVで高線量率モードであるFlattening Filter Free(FFF)を搭載していることである。通常のFlattening Filter(FF)モードでは4MV・230MU/min、6MV・10MVは500MU/minの線量率である。高線量率モード6MV・FFFは1 ,400 MU/min、10MV・FFFでは2,200MU/minで照射が可能となるため、1回線量の大きい脳定位治療や肺定位治療で照射時間の短縮のために活用している。また画像誘導放射線治療(Image Guided Radiation Therapy:IGRT)機能としてキロボルト(kV)-2D、3 D-CBCTに加えて体表面での位置変動を検出するマーカを使用しない4 D-CBCT Symmetryを装備していることが大きな特長である。CBCTは照射前だけでなく照射中も画像取得が可能で、照射中に4 D-CBCT撮影を行うIntra-Fraction Symmetryでは実際照射された腫瘍位置を画像確認・記録できるため肺定位治療で活用している。そのほか放射線を使わないIGRT機能として、光学式体表面スキャンで得られた画像によりセットアップ・モニタリング・呼吸同期対応を行う『Catalyst』(C-RAD社製)、超音波画像を利用したハイブリッドイメージングガイドシステム『Clarity』を装備していて文字どおりVersa HDの語源である多才(versatile)な機能を有する高精度(high definition)なリニアックである。
本稿ではVersa HDの特長であるこれらの機能についての使用経験を報告する。