乳房領域におけるエラストグラフィ/中島一毅(川崎医科大学)[全6頁]

映像情報メディカル 編

500円(税込)

産業開発機構株式会社

2018 年、日本乳癌学会が発刊している「乳癌診療ガイドライン」は、これまでのガイドラインがエビデンスベースで作成されたのとは異なり、公益財団法人日本医療機能評価機構(Minds)の指導のもとに引用論文の抽出、解析がすすめられ、社会的有益性、不利益性を考慮したアウトカムベースに作成された社会的重要度が高いガイドラインである。本ガイドラインにおいて「乳房超音波エラストグラフィ」はCQ(Clinical Question)のひとつとしてとりあげられた。この検索過程で、引用データとして抽出された複数のメタアナリシスを比較すると、臨床試験の結果自体に年代ごとの大きな差異が認められていたことから、開発当初から徐々に装置やアプリケーションが進化するとともに精度も変化しているためと判断され、「最も新しいものでなければ適切な精度評価はできない」と考えられた。そこで2018年ガイドラインでは、最新の装置・アプリケーションを使用している前向き臨床試験結果を中心にレビューが行われた。妥当と判断される前向き臨床試験では「乳房超音波検査おいて、Bモードにエラストグラフィを追加することで特異度が向上する」との結論・考察が多く見受けられたことから、本ガイドラインでも、「乳房精密検査においてエラストグラフィを導入することで、NPVが向上し、不要な生検回避(本来、乳がんではなく、生検が不要である症例への生検回避)に貢献すると結論づけされた。
最終的に「原発性乳癌の精密検査として乳房エラストグラフィは推奨されるか?」のCQ(Clinical Question)では、「乳房精密検査において、エラストグラフィを導入することは、NPVが向上し、不要な生検回避に貢献すると考えられ、乳房超音波精密検査の診断精度向上に推奨できる」との解説とともに、「乳房超音波検査において、Bモードにエラストグラフィを追加することを弱く推奨する」との推奨コメントが付けられた。今後、不要
な生検を回避するためにも、正しい手法で、撮像、診断されるエラストグラフィを普及させていきたいと考えている。正しい診断をすすめるには、乳房エラストグラフィの特性、撮像法、使用法、診断アルゴリズムを十分に把握している必要があり、不慣れな検査者がいきなり使用して最終判断することには危険性をはらんでいることを周知していただきたい。