肝血管腫におけるSMIの振舞いについて/山本幸治(済生会松阪総合病院)[全5頁]

映像情報メディカル 編

500円(税込)

産業開発機構株式会社

SMI(Superb Microvascular Imaging)は、目に見える血流の範囲を広げ、以前には見られなかった超微小血流を超音波で視覚化する技術である。
従来のドプラ技術と比較して、SMIの利点は、高いフレームレート、高解像度、高感度、およびより少ないモーションアーチファクトである。伝統的なカラーおよびパワードプラ技術は、低速成分を抑制することによってクラッタを除去する。この抑制は、結果としてデータの損失をもたらし、その後、より小さい血管における流れの可視性を失う。SMIは強力かつインテリジェントなアルゴリズムであり、低流量信号を抑制する代わりに、低流量成分を保存し、詳細および定義を提供しながら、これらの流量信号を重ね合わせた組織運動アーチファクトか
ら分離する。SMIはクラッタの動きを分析し、適応アルゴリズムを使用して組織の動きを識別して除去し、より正確な血流描写を明らかにする。これにより、微小血管および低速血流が実証され高分解能の超音波画像が得られる。SMIには現在2つのモードがある。mSMI(monochrome SMI)は、解剖学的背景情報を除去することによって、高感度の細かい脈管構造を示す。
色分けされたcSMI(color coded SMI)は、時間的および空間的解像度が高いフローおよびグレースケール情報を同時に表示することが特徴である。今回は、肝血管腫においてmSMIで腫瘤の辺縁にカラーシグナルと、高エコースポットを有する所見を呈する症例を多く経験する。肝血管腫は、従来のカラードプラ法においてはほとんどの症例で腫瘤内の血流シグナルを把握することは不可能であった。ソナゾイドを使用した造影超音波検査では、早期では、辺縁から綿花状に染影し、後期でも腫瘤の辺縁がリング状に染影持続することが特徴とされ診断に応用されてきた。しかし、まだまだ日常診療には普及してないのが現状である。今回、mSMIの登場により造影超音波検査に一歩近づいた感がある。これは、肝血管腫の辺縁に非常に低流速の血管が支配していたものをmSMIでと捉えることが実現したと考えられる。
また、肝血管腫は、病理組織(HE染色)で特徴的な内部の海綿状の空隙を認めるとされている。この海綿状の空隙がmSMIでも低エコー領域として描出可能になってきた。組織での海綿状の空隙と一致すると考えられることは非常に有用な所見である。日常診療で、頻繁に遭遇する肝血管腫を診断するにおいてmSMIで腫瘍の辺縁にカラーシグナルと高エコースポットを有し、腫瘤内部の空隙を呈するものは肝血管腫を診断するうえで重要な所見である。