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拡散MRIは造影剤を使用せずとも水分子のブラウン運動を定量化可能なイメージング技術である。ボクセル内の水分子の運動に関するサブミリメーターの情報をミリメーター単位で取得でき、非侵襲的なイメージング法として主に急性期脳梗塞の診断に関し臨床で広く使用されてきたが、癌の検出や診断における有用性が近年ことに注目され、さまざまな領域においてADC を中心に検討が行われてきた。癌は従来の手術療法だけでなく化学療法や放射線治療を含む集学的治療が一般的であり、腫瘍のイメージングに関しては最適な治療法を最適なタイミングで選択可能な、有用かつ非侵襲的な画像診断が求められている。特に乳癌においては、手術療法・放射線療法以外にも、ここ10年余りでサブタイプ分類に応じた化学療法、内分泌療法、さらには分子標的療法などさまざまな治療法の選択が可能となり、初回の病変評価のみならず治療経過中の効果判定などの場面で画像診断を必要とする機会が増加している。乳房MRIに対する需要がさらに高まっている現状においては、有用かつ非侵襲的な画像診断法の開発が必要不可欠である。拡散MRI撮影により最も単純なモデルを用いて見かけの拡散係(Apparent Diff usion Coeffi cient:ADC)が算出され、脳梗塞や腫瘍MRIイメージングにおいて幅広く用いられてきているが、ADCは実際の生体内の水分子は自由拡散であるという仮定のもと直線の傾きを用いて計算される。しかしながら実際の生体内の信号減衰は直線ではなく曲線を描き(非ガウス拡散)、200sec/mm2以下の低いb値においてはIntraVoxelIncoherentMotion(IVIM)効果として認められ、また(少なくとも)1,000sec/mm2以上の高いb値においては阻害拡散や制限拡散により説明可能であり、Kurtosis modelなどの数理モデルを用いて定量化できる。特に非常に高いb値においては、信号はnoise fl oorに達しており、これによる曲線解析への影響は無視できない。よって解析の前にノイズ補正を行う必要がある。上記のように拡散MRIによる非ガウス拡散解析法の
進歩に伴い、灌流をはじめとするさまざまな腫瘍の特徴を反映した新たなバイオマーカの算出が造影剤を使用せずとも可能となっており、拡散MRIのもつ新しい役割が期待されている。