AIRテクノロジーによる腹部MRI/玉田大輝(山梨大学医学部 先端医用画像学講座)ほか[全8頁]

映像情報メディカル 編

500円(税込)

産業開発機構株式会社

RFコイルは、腹部のみならずあらゆるMR画像のSNR を決定する重要なハードウェアである。これまで、高感度化を目指して数多くのRFコイルに関する画期的な開発が行われており、近年では画質の向上が著しい。MRIのごく初期においては、現在のような体幹部専用の受信コイルは存在せず、送受信兼用のボリュームコイルで撮像が行われていた。このようなボリュームコイルを用いた受信には、コイルの大きさと撮像対象の大きさによってSNRが大きく変化するというデメリットが存在した。そして、1990年代には、Roemerらによってフェーズドアレイコイルと呼ばれる複数のコイルエレメントから構成される革新的な受信コイルが提案された。現在でも広く用いられているアレイコイルを用いることで、広範囲を高いSNRで撮像することが可能になった。多くの臨床機においては、バードケージのようなボリュームコイルと、部位ごとの受信コイルの組み合わせで撮像を行うことが常識となっている。その後、コイルアレイ数は飛躍的に増加し、現在では128チャネルといった非常に多数のコイルアレイを搭載した受信コイルが登場している。しかしながら、このアレイコイルには、その回路的な複雑化による設計上の制限やコイル重量の増加といったさまざまな問題点も残されていた。
本稿で紹介するAdaptive Image Receive(AIR)テクノロジーは、特殊なワイヤと回路設計を組み合わせることで、上記で述べた種々の問題点を改善することに成功している。その結果、AIRテクノロジーを用いたコイルは、物理的なフレキシビリティや軽さといったMRIユーザのみならず検査を受ける患者にとっても負担軽減に繋がる特徴をもっている。特に、体幹部用のAIRコイルは、ブランケットのような形状になっており、画質を損ねることなく、快適な検査を実現することができる。ここでは、AIRテクノロジーの基本的な仕組みの解説と従来
型コイルとの性能比較を示す。最後に、AIRコイルで撮像した腹部の画像を紹介する。