水産物の原料・産地判別 水産学シリーズ149

福田裕 編, 大越健嗣 著, 落合芳博 著

3,960円(税込)

株式会社恒星社厚生閣

注目の魚介藻類産地判別技術の最新情報 / 食品に対する信頼確保のため原料や産地などを表示することが義務づけられた。しかしそのシステムを機能させるには当然のことながら、科学的な判別方法の確立が必要だ。本書はこの課題を実現すべく各領域の専門家が集まり、最新の種・原産地判別技術を紹介する。



はじめに
 消費者の食品に対する信頼を確保するために,JAS法が改正され生鮮魚介類や水産加工品について原料や産地などを表示することが義務づけられた.また,EUでは2005年から水産物に対してトレーサビリティーシステムを導入し,事故の発生源や原因を遡及して特定できるよう,原料や産地などの生産履歴,および流通履歴などを電子情報化する仕組みをスタートさせた.わが国でも養殖魚や凍結マグロなどについてトレ-サビリティーシステムを応用する試みが全国各地で展開され始めた.
 一方,これらの法律やシステムを機能させるためには,表示内容や電子化された情報が正しいかどうかを検証できる科学的判別の方法を確立しておくことが不可欠である.しかし,水産物は近縁種がたくさんあり,加工品の種類も多く,海外からの輸入も増えている.切り身や貝のむき身,加工品などでは,外見から原料や産地を判別することは極めて困難である.
 近年,以上のような情勢を背景に,水産資源学,水産遺伝学,水産生化学,水産食品学等の広範囲な研究者の努力により,水産物の種類やそれらが生息する地域をDNA解析や微量成分解析で判別する研究が目覚ましい進展を遂げている.
 平成17年3月31日に東京海洋大学にて開催された下記の水産学会シンポジウムでは,水産物の各種判別法に関する最新の研究成果が報告され,本書はこれらの発表内容をまとめたものである.本シンポジウムは農林水産省「先端技術を活用した農林水産研究高度化事業」の成果に負うところが多く感謝申し上げる.