かまぼこの足形成 II 水の挙動とゲル物性の変化 水産学シリーズ146

伊藤慶明 編, 石崎松一郎 編著, 関伸夫 著

3,960円(税込)

株式会社恒星社厚生閣

水産食品の品質の決め手、水の挙動を探る / 魚肉中の水の存在状態の変化ならびに魚肉ゲルの粘弾性に関する研究成果。魚肉の保水性とゲル形成能、魚肉すり身の加熱に伴う水の挙動、かまぼこゲルはエントロピー弾性体か、エネルギー弾性体か?など。



はじめに
 魚肉ゲル形成に関するシンポジウムとして,平成13年春に「魚肉のゲル形成における構成タンパク質の役割」が開催され,筋肉タンパク質について主に化学的な観点から論議された.この内容が水産学シリーズ130「かまぼこの足形成-魚介肉構成タンパク質と酵素の役割」として同年秋に出版された.しかし,このときに取り上げられなかった分野,すなわち,肉中に最も多い成分である水の挙動および魚肉ゲルの重要な品質となっている粘弾性・物理的な状態に関する研究もゲル形成機構およびゲルの状態を理解するうえで欠かすことのできない分野である.また,食品の水に関して昭和48年以来シンポジウムが開催されておらず,ゲルのレオロジー的な研究に関してはこれまでに取り上げられていない.この間に水の挙動を調べるため加圧法の応用や低温脱水分析法の開発を始め,核磁気共鳴法や示差走査熱量計による新しい試みがなされている.また,動的粘弾性挙動による肉糊やミオシンレベルのゾル-ゲル変化の把握が広く行われるようになってきた.そこで,これまでの研究成果を纏め,問題点を明らかにすることにより,今後の研究に資することができると考え,下記のシンポジウムを企画し,平成17年4月4日東京海洋大学で日本水産学会の主催により開催した.
 本書はこのシンポジウムの講演内容に基づいて纏めたものであるが,紙面の制約もあり行き届かなかったところもあると思う.しかし,この分野における研究の進捗状況を示すことができ,今後の研究に役立つことができれば幸いである.
 最後に,本シンポジウムの開催と運営にご尽力いただいた日本水産学会関係各位並びに座長,話題提供者,討論に参加していただいた皆様方に御礼申し上げる.シンポジウム当初には野崎先生(長崎大)がご専門の一分野である「収着等温曲線から見た水の挙動」について話題提供をいただく予定であったが,平成16年9月に急逝され,余人を持って代え難く,演題を削除せざるを得なかった.収着等温曲線については赤羽氏及び御木氏の講演の中で取り上げていただき,できるだけ補足することとした.野崎先生のご冥福をお祈りするとともに先生に本書を捧げたい.