水産物の品質・鮮度とその高度保持技術 水産学シリーズ141

中添純一 編, 山中英明 編, 渡部終五 著

3,960円(税込)

株式会社恒星社厚生閣

最新の水産生物生理と飼育・蓄養技術を紹介 / 高品質・高鮮度の水産物を生産する技術開発が求められている。本書はそのための基礎となる最新の水産生物生理、生産過程・流通過程での高品質・高鮮度技術を紹介。養殖・活魚輸送関係者には是非読んで頂きたい書。



はじめに
 水産物の品質や鮮度は食品の安全性や食味などに密接に関連し,市場価値に影響を及ぼす最も大きな要因の一つとなっている.このために品質,鮮度に関する研究が大学,国公立試験研究機関および民間企業などで熱心に行われてきた.日本水産学会においても研究の進展に併せて,直接または間接的に関連するシンポジウムが 30 回前後開催されている.
 しかし,最近の水産業を取巻く国内外の状況は厳しく,水産物の高付加価値化のための,より高鮮度および高品質の水産物の生産技術開発が求められている.本書はこのような情勢を背景に平成 16 年 4 月 5 日に鹿児島大学にて開催された下記水産学会シンポジウムの発表内容を再整理したものである.
 今回のシンポジウムは,大きな関心をもって開催され,個々の発表に対して 20 を超える質問がなされるなど盛会であった.総合討論においては,1.効率の良い活魚流通技術の開発,2.個体としての生命と同様に組織もしくは細胞レベルの生命維持,3.品質の評価技術の開発の重要性が確認され,漁獲後のみでなく,飼育と蓄養技術が鮮度および品質に著しい影響を及ぼすことが明らかにされた.また,今回は取り上げることが出来なかった魚介類の高圧蓄養が鮮度保持に有効であることが参加者から報告された.これらのテーマに,新たな切り口で多くの研究者が取り組んでいることを示すことが出来たのもこのシンポジウムの成果の一つと考えている.
 魚介類を対象に高鮮度・高品質を保持するため,最新の水産生物生理,化学分析技術,センサー技術,DNA 解析などの視点から課題を組み立て,内容の濃い役に立つ情報を伝えるよう心がけた.