養殖魚の健全性に及ぼす微量栄養素 水産学シリーズ137

中川平介 編著, 佐藤実 編著

3,960円(税込)

株式会社恒星社厚生閣

飼料添加物としての微量栄養素の最新知見 / 近年使用されている飼料添加物としての微量栄養素に関し、化学的根拠に基づいた有効性とその理論的根拠を編者他、竹内俊朗氏らが纏める。養魚飼料研究の指針だけでなく、養殖に携る方々のマニュアルとしても役立つ。



はじめに
 近年,世界各国で食料資源としての魚類の重要性が認知され,わが国でも沿岸漁業生産(魚介類のみ)における養殖生産の割合は,ここ 10 数年間に 20 から 30 パーセントへと着実に増加してきた.これを支えてきたのが養魚飼料であるが,これまでは成長や生残率の向上など量的な面が重視され,必須成分,栄養要求に関する研究が主に進められてきたと言える.
 畜産業界では既に生産性向上から,消費者の好みが重視され,優れた形質をもつ品種の発掘や育種管理とともに,飼料による肉質改善の試みがなされ,各地で畜肉製品のブランド化が進んでいる.魚類養殖でも,近年は養殖魚の肉質, 食味, 活力など質的な面についても関心が寄せられ,栄養成分に加え, 微量栄養素に関する研究が盛んになってきたが,研究は緒についた段階といえよう.ヒトに対して多くの機能性食品があるように,養魚飼料添加物も多くが市販されているが,それらの経済性を含めた有効性の確認が必要である.将来は魚類栄養学分野への遺伝子技術(Nutrinogenomics)の導入により,栄養素の効果を遺伝子への影響から評価できれば,さらに説得力が増すであろう.
 今後の養魚飼料研究の指針となるよう,これまでに明らかとなった知見を整理するため,平成 15 年 4 月 5 日,東京水産大学において日本水産学会主催のシンポジウムを以下のとおり開催した.
 本書は近年使用されている飼料添加物としての微量栄養素について科学的根拠に基づいた有効性とその理論的根拠について各方面の養魚飼料研究者が有している知見をまとめた.内容は総説としてのみならず, 養殖にたずさわる方々のマニュアルとしても役立つよう心がけた.