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日本における乳がんの罹患者数・死亡者数は依然年々増加しているが、本邦では欧米と比して検診率が低い(日本30~40%程度、欧米70~80%程度)。結果、現状では乳がん発見経緯の第1位(56%)が自己発見という報告もある2)。自己発見された腫瘍の平均サイズは、検診で見つかる腫瘍の平均サイズより大きいことを示すデータもある。充分な治療効果を得るには、転移前の治療開始が不可欠なことを考慮すると、検診率の向上と検診の確実性の向上が求められている。
現在、標準的な検診手段であるマンモグラフィではデンスブレストの被験者においてはがん発見率が低下することが知られている。国内では乳がん罹患者に占める40代、50代の患者の割合が多く、若年層においてはデンスブレストの方の割合が多いため、欧米に比べ国内においては、デンスブレストの被験者の割合が高い若年層においても高い検出感度を維持できる検診手段が必要とされている。
国内40歳代の7万人を対象としてJ-STARTの研究では、マンモグラフィ単独で用いた場合に比べ、超音波診断とマンモグラフィの併用により、がん発見率が1 .5倍に向上することが報告されている。しかし超音波診断にも課題がある。プローブ操作をハンドヘルドで行うため、がん発見の可能性が検査者のスキルに応じて変化してしまう(プローブの対象への当て方のスキルや、病変部を記録するためには検査者自身が病変疑いの部位を見つけら
れるスキルが必要である)。また、撮像断面の位置や向きの情報が保存されないことや、接触させながらの撮像により撮像中の対象物に変形が生じるため、同一部位を再現良く撮像することが困難である。これらのことから、われわれは検診率の向上に貢献し、かつ高い検診精度を実現する手法の実現を目指している。検診率向上を実現するには、社会的なコストを過度に増加させずに検診機会を増やすことが必要であり、そのためには撮像および読影の自動化(もしくは撮像者や読影者を支援することによる負担低減)が1つの方策として考えられる。読影支援に関しては、深層学習の発展により将来像が見えつつあるので、本稿においては撮像の自動化を目指す技術としてリングエコーを用いた3次元乳房撮像技術の紹介を行う。