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これまで治療に非常に難渋していた修復不可能な広範囲腱板断裂などの治療に対し、良好な治療成績が報告されているリバース型人工肩関節置換術(以下、RSA)が2014年4月に本邦に導入された。RSAは通常の解剖学的人工肩関節とは異なり、腱板に依存しなくとも肩関節の挙上が可能になる半拘束性の人工関節である。特徴として肩甲骨側に半球型のインプラントを固定し、上腕骨側にソケット状のインプラントを設置することにより肩関節挙上における回転中心が内側に移動することで、上腕骨を挙上するためのモーメントアームが増大し、上腕骨の挙上が可能になる画期的な手術法である。しかし、欧米の報告によるとRSAには多くの合併症が報告されており、その合併症の1つにスカプラノッチといわれるものがある。スカプラノッチとは肩関節運動時に上腕骨に挿入したライナーと肩甲骨が接触し、それが繰り返されるためにライナーや肩甲骨が擦り減る合併症である。過去の報告によるとスカプラノッチの発生率は30~97%との報告もあり、その発生率はきわめて高いものと考えられる。スカプラノッチが進行するとベースプレートの固定力が低下する懸念があり、注意深い経過観察が必要となる。従来から報告されているスカプラノッチは上腕骨が内転する際に肩甲骨下方と衝突し、それが繰り返されることにより肩甲骨下方に骨欠損ができる現象であり、通常の肩関節の正面単純X線でその存在を検知することができる。一方、あまり知られてはいないが、過去の報告によると下方のみではなく肩甲骨の前方、および後方にも骨欠損ができることがあり、これらは上腕骨を内外旋する際に上腕骨に挿入したライナーと肩甲骨が前後で接触し、それが繰り返されることにより、肩甲骨の前後方向の骨欠損が発生すると考えられている。しかしながら、肩甲骨の前後方向に骨欠損が発生した場合は、肩関節の正面単純X線でその存在を検知することは困難である。また、ベースプレートとスクリューの近傍の骨欠損になるため、金属アーチファクトの影響を受けCTで検知することも難しいとされている。
近年、人工関節周囲の骨欠損を検出する方法として断層撮影技術(トモシンセシス)の有用性が報告されている。トモシンセシスは断層で画像を得ることができ、金属アーチファクトの影響も受けにくいので、単純X線やCTでは検知しにくい前後方向の骨欠損を検出できる可能性がある。本研究の目的は、豚の肩甲骨を用いたRSAのベースプレート周囲の骨欠損の検出感度と特異度を単純X線像、CT、トモシンセシスで比較検討することである。