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2020年に東京オリンピック・パラリンピックを控え国民の多くが「スポーツ」に興味をもち、スポーツ人口は増えていくと考えられる。アスリートやスポーツ愛好家が長くスポーツ活動を継続するためには、ケガを予防することが必要となってくる。医学界全体が「治療」の時代から「予防」の時代へと大きく転換し、スポーツ医学の領域でも予防に注目が集まっている。世界中でさまざまなスポーツ損傷予防トレーニングが報告され、スポーツ損傷発生数の減少という一定の効果が証明されている。一方で、スポーツ損傷予防トレーニングを行うと、どの骨格筋が活動するかについては分かっていないことが多い。従来、骨格筋活動は筋電図によって調査されてきたが、体表から触れることができる筋や調査を予定している筋しか評価できないことや電極を貼付した状態での運動が制限されることなど検査方法として十分ではなかった。そこで、われわれは体幹および四肢深部に存在する筋を含む全身骨格筋活動を同時に評価することが可能な方法を模索し、FDG([18 F]fluoro-deoxyglucose)-PET(Positronemission tomography:ポジトロン断層撮影法)にたどり着いた。
PETは、生体内に放射性の代謝物質やその類似化合物を投与し、その物質の代謝過程を画像化する核医学的検査法である。FDGは、グルコースのOH基を放射性同位元素である18Fに置換した構造をもち、グルコースと同じように体内に吸収される。FujimotoやTashiroは、グルコースが骨格筋のエネルギー源の1つであることに注目し、世界に先駆けて運動後の全身骨格筋グルコース代謝を報告した。その後の研究により、FDG-PETによって測定された糖代謝は骨格筋活動強度と高い相関を示し、筋活動量を測定する指標としての信頼性が証明されている。本稿では、これまでにわれわれが行ってきたスポーツ損傷予防トレーニングによる体幹と下肢骨格筋代謝への影響について報告する。