IQon スペクトラルCTの紹介/株式会社フィリップス・ジャパン[全5頁]

映像情報メディカル 編

500円(税込)

産業開発機構株式会社

CT装置における新たな撮影、解析手法としてdual energy CT装置が登場し10年以上が経過している。Dual energy CTは、2つの異なるX線エネルギーを用いて画像を作成することで、ヨード密度、実効原子番号、尿酸などの情報を得ることができる。これにより、CT値と形態学情報では判別が難しかった病変の組織性状を前述したCT値以外の指標をもって判別、診断できる利点がある。
従来のdual energy CT装置は、管球側で2つの異なる管電圧を利用してX線を照射する方式のため、撮影前にdual energy CTで撮影するか否かの判断が必要となる。さらに、従来からの管電圧120kVpによる撮影も加えるならば被ばく増大の可能性にもつながりワークフローに大きな問題点を抱えていた。また、2つの異なる管電圧を照射する方式は複数あるが、それらはいくつかの撮影パラメータの制限を許容せざるを得ない。スキャンフィールドの縮小、自動露出機構、心電図同期撮影への対応不可がそれにあたる。また取得した2 つのデータに空間的、時間的なズレが生じるため、画質への影響も懸念される。
フィリップスが2016年に上市した『IQonスペクトラルCT』は、異なる素材の検出器を上下2 層に配置した「NanoPanel Prism」を搭載したCTである。二層検出器は、1つの連続X線エネルギーを2つの低および高エネルギーのプロジェクションデータに分光して取得する。取得した2つの異なるエネルギーのプロジェクションデータを光電効果とコンプトン散乱の減弱データに弁別して再編成することでSpectral Based Image(以
下、SBI)を作成する。このスペクトラルリコンストラクションの過程によって、エネルギー分解能の影響が解消されSignal-to-Noise Ratioが高い画質が得られる。SBIは、120kVp画像と従来dual energy CTで解析できる画像(仮想単色X線、ヨード密度、実効原子番号など)を含んでおり、クライアント型解析ワークステーション「IntelliSpace Porta」にて、読影室、CT操作室など必要な場所にクライアント端末を配置することで解析可能である。これらのシステム構成によりIQonスペクトラルCTはdual energy CT画像がトレードオフなくレトロスペ
クティブに得られる画期的なCT装置である。
現在、フィリップスは「First Time Right」を提唱している。FTRの定義は「画像診断において、いち早く診断を確定させるため、より低コストで診断のアウトプットを最大限にすること」であり、フィリップスはこれに沿った装置開発とソリューション提案を進めている。IQonスペクトラルCTは、FTRで掲げた4つの項目を高い水準で満たす装置である。本稿ではFTRに沿って本装置の3つの特長を紹介する。