進化し続ける運動器超音波診療~SMIを用いた新たな視点~/宮武和馬[全5頁]

映像情報メディカル 編

500円(税込)

産業開発機構株式会社

われわれ整形外科医にとっての画像診断といえば、単純レントゲンといったイメージが強い。ただ、その常識が少しずつ変わり始めている。肩が痛い患者を例にとると理解しやすい。多くの整形外科医は必ずレントゲンを撮るが、異常が見つかる例は少ない。石灰沈着性腱板炎、変形性肩関節症、また高度な腱板断裂による骨頭の上方化など、診断できるものはわずかである。レントゲンだけでは軟部組織の診断は難しい。そこにMRIが普及し、変化が訪れた。腱板断裂、腱板炎、長頭腱脱臼、長頭腱炎、滑液包炎など多くの軟部組織の診断が可能になった。しかし、MRIには高額な医療費がかかり、1回の検査時間は30分程度と長い。予約で2週間から1ヵ月待ちの施設さえある。まずはMRIとはならない。そのため、多くの患者は画像診断なくして治療されている。病態を把握されることなく、漫然とNSAIDSを飲まされている。このことのどこが医療といえるのだろうか。ここに一筋の光を射したのが超音波診療である。運動器に超音波診療?と疑問の声が上がるかもしれないが、MRIと同等、あるいはそれ以上の情報を得ることができる。
画像検査の基本はBモードでの静的な観察である。ただ、その他の画像検査と一線を画す点は、動的に観察できることと血流を評価できることである。特にドプラ法による血流の観察は、炎症や修復過程の血流を評価することを可能にした。ただ、腱や靭帯はもともと血流が乏しい組織であるため、従来のドプラ法だけでは血流が拾えないケースもある。わずかな異常血流を見逃さないためにも、低流速の血流評価をいかに行うかが課題であった。
キヤノンメディカルシステムズ社のSuperb Micro-vascular Imaging(SMI)はドプラ法と比較し低流速で微細な血流を表示することが可能である。
SMIはモーションアーチファクトを血流信号と区別することで、血流信号のみを取り出し、低流速の血流を描出することができる。また、ブルーミングが少ないため、詳細な血管走行を描出できる。さらには従来のドプラ法を比較して圧倒的な時間分解能を有している。このSMIを駆使することで、今まで診断に難渋していた障害を評価することが可能である。また、SMIによる新たな視点が病態の把握などに今後役立つことは間違いない。本稿ではさまざまな症例からSMIの有用性について紹介する。