【試し読み】ここは、おしまいの地

こだま 著

太田出版

スーパーの鮮魚コーナーを物色していた父が、
一匹八十円と書かれた蟹を見て「虫より安いじゃねえか」と呟いた。

『夫のちんぽが入らない』から1年。
“ちょっと変わった”人生のかけらを集めた自伝的エッセイがついに書籍化!

著者の実話を描いた私小説『夫のちんぽが入らない』。その衝撃の関係性が口コミで瞬く間に広まり、2017年1月の発売からいままでで13万部(2017年12月現在)に到達し、異色のデビューとなった。主婦こだまの満を持してのデビュー2作目は、『Quick Japan』誌上で掲載した読み切りと連載「Orphans」をもとに改稿した短編集。家族や職場、これまで経験してきた著者の半生を描く。

何もない“おしまいの地”に生まれた実家は空き巣に何度も入られ、訪問販売の餌食だったこと。中学の卒業文集で「早死しそうな人」「秘密の多そうな人」ランキングで1位を獲得したこと。引越し業者でさえ「これは最強っすね」と袖口で鼻を押さえながら言ってくる「臭すぎる新居」での夫との生活。

生まれ持った気質なのか、見事なまでに災難に巻き込まれる“おしまいの地”での出来事。