ナラティブカンパニー トップたちの決断

パブラボ編集部

500円(税込)

パブラボ

「日本の繁栄の陰には、無名の日本人たちの血と涙のドラマがあった」
これはNHKで人気だった『プロジェクトX』のキャッチコピーですが、
本書に綴られた11篇もまた時代を動かさんとする挑戦者たちのドラマです。
ただ、本書には大企業の物語は出てきません。いずれも中堅・中小の物語です。

それは波乱万丈や悪戦苦闘、試行錯誤といった言葉があてはまる山あり谷ありの時間であり、
それぞれの物語の主人公である組織のトップたちに起きた絶頂や凋落の経験はそうそうないことのような気もします。

しかし本当にそうでしょうか。

ここで描かれているのは、10年なり20年なりの間に起きた事件や出来事の凝縮です。
よくよく考えてみると、こうした時間のなかでは、山も谷もないことのほうが不思議です。
家族や恋人との別れもあるでしょうし、左遷やリストラ、
あるいは勤めている会社がなくなることだってあるかもしれません。
もちろんつらいことばかりでなく、生涯をともにするパートナーとの出会いや、
ひょっとしたら宝くじが当たることもあるかもしれません。
だれの人生にも山や谷は訪れるものです。

そう思うと知りたくなるのは、山や谷での過ごし方、正確にいえば絶頂にいるとき、
どん底にいるときの在り方ではないでしょうか?
絶頂にいるときには何を手に入れ、さらなる飛躍のためには何が必要なのか。
どん底にいるときには、俵に足をかけながらもいかに踏みとどまり、どうすればまた山に登っていけるか。

本書で組織のトップに起きた山や谷を追体験することで、少なからずのヒントを得られるように思います。
ちなみに、ナラティブ(narrative)とは物語、叙述すること、語り口のことです。
商品やサービス、企業が生まれた背景には必ずナラティブがあり、
突き抜けた結果を得ようとすれば、抜き差しならない切実さが否応なくそこにつきまといます。

切実さはやがて縁や感謝、つながりや思いやりとなりますが、それでもなお、おもねることのできないこだわりが人を動かします。

この本はそんなことを教えてくれる一冊です。